「断絶への航海」を読みました。西川先生がおすすめするハードSFです。

 正直、かなり読むのに苦労しましたが後半になるにつれてケイロン人の社会に魅了され、とても面白かったです。

 断絶の航海の簡単なあらすじはこちら


 第三次世界大戦の傷もようやく癒えた2040年、アルファ・ケンタウリから通信が届いた。大戦直前に出発した移民船〈クヮン・イン〉が植民に適した惑星を発見、豊富な資源を利用して理想郷建設に着手したというのだ。この朗報を受け、〈メイフラワー二世〉が建造され、惑星ケイロンめざして旅立った。だが彼らを待っていたのは、地球とはあまりにも異質な社会だった……

惑星ケイロンの社会では、お金、政府、法律、といったものが存在しません。資源については技術の発達でケイロンでは無限に手に入るので、食料や資源がいつでも無料で手に入ります。何もかも手に入るケイロン人の社会では最終的に「人々から得られる尊敬」を通貨として生活しています。

例えば、食料に関してはケイロン人は「自分の価値」と見合ったものしか交換しません。

本書では地球人がケイロンにやってきて食料が無限にあるからと、たくさんとっていく様を見てケイロン人が「あんなに物を持って行って、どうやって釣り合う敬意を手に入れるつもりなんだろう」というシーンがあるように、ケイロン人の社会では人からの敬意こそがもっとも価値のあるものとされており、常にそれに見合った行動が要求される社会なのです。

 逆にいえば、敬意を欠くような行為をする人間は自然に沙汰される社会といえます。

 人々が生き生きと働いている様子がとても良かった

そのため、ケイロンの社会では幼いころ(確か10歳ぐらい)から「自分は社会(人)にどう貢献するのが良いのだろう?」と考えるようになります。

そこでは、地球人のように「この組織(大学)に入らないと人生は安定しない」とか「この職業は将来儲かって安心だから、この大学に行かないといけない!」といった発想はなく、純粋に「自分は何が得意でどういう人生を送るべきか?」を考えられる社会です。

 そういった生き生きと暮らしているケイロン人を見ると、読んでいるこっちまで感動して、めっちゃ素敵な社会やんと感じました。

SFの世界だけど、ケイロンに近い社会は作れる

 もちろん、これはSFなので、ケイロンのような社会が作れるかというと、資源が無限に作れるという技術は必須となってくるので、難しいと思います。そのほかにもいろいろとハードルはあると思います。

 しかし、これは西川先生からも教えてもらったのですが、西川先生は「『学び合い』的な地域コミュニティを作ることができれば、僕たちでもケイロン的な社会を作ることはそれほど難しくない」とおっしゃっていました。

僕が考える『学び合い』的なコミュニティとは以下の地域コミュニティだと思います。


=職に困らない(職を失ってもコミュニティの誰かが紹介してくれる)


=富をお金ではなく、人との繋がりから生み出す(地元の友達との宴会、コミュニティ内で資源を共有する)

 こういったコミュニティを作ることができれば、お金の心配もする必要もなくなります。(最悪誰かが職を紹介してくれるから)

また、そのコミュニティで重要になるのはお金ではなく「人からの尊敬」となります。つまり、そのコミュニティに貢献している人ほど、困ったときに誰かから助けてもらえるようになったり、資源を貸してもらえたりできるようになります。

 そうしたコミュニティでは人に対して良いようにふるまうことが常識となるので、法律も自治体も必要なくなります。

 これから人口減少で経済が衰退していきどんどん貧乏になる日本(ついにiPhoneすらも買えなくなってきた僕たち、、)において目指すべき地域コミュニティのヒントはケイロン人にあるのではないでしょうか?

 「断絶への航海」を読んで、より理想的な地域コミュニティとは何なのか、分かったような気がします。このような話が「断絶への航海」では様々なストーリーをもとに説明されているので、是非多くの人に読んで欲しいです。

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