この本は社会学者である佐藤郁哉先生が暴走族について、質的調査(参与観察)と数量的調査を行い、暴走族に参加する若者について詳細に記録している本です。
暴走族というと、僕は「荒れた学校の生徒」や「社会に恨みを持っている若者」というやんわりとしたイメージを持っていましたが、インタビュー調査からは、そういった若者が暴走行為を行なっているのではないことが明らかになっています。
序盤では、なぜ暴走行為を行うのかをインタビュー調査を元に明らかにしています。また、無秩序に見える暴走族の世界にもしっかりとした構造的な秩序があるという結果もとても興味深かったです。
中盤では、マスメディアと暴走族が作りだす。物語(神話)について。マスメディアが作りだす物語に沿って、暴走族が自己を演出しようとしている点がとても面白かったです。
例えば、暴走族というと、雑誌などでよくバイクの前でメンバーが集合し、全員イカついポーズをしている写真がありますが、あれは暴走族のメンバーがメディアに営業をかけて、そういうポーズを撮らせており、そこでのメディアは暴走族の下請け会社のようであったと書かれていたり。参与観察を通して、暴走族という集団とメディアの本当の関係性を明らかにしている記録がとても興味深かかったです。
終盤では、非日常(暴走行為)から日常(一般生活)に暴走族が戻っていく様子が書かれていました。あれだけ暴走行為を行なっていた若者が日本社会にスーっと取り込まれていく様子は読んでいてとても奇妙でした。
そういった暴走族が日常に帰っていく姿を通して、日本社会の画一性が世界の中でも強力であるところを指摘しているところがとても勉強になりました。
この本を読むまでは、参与観察というと地味で面白くなさそうなイメージがありましたが、暴走族の本当の姿を明らかにし、最終的には日本社会の構造まで考察していく佐藤先生の本を読むと、とても面白そうだなと感じました。