本日はエマニュエル・トッドの「大分断」という本を読みました。

エマニュエル・トッド (Emmanuel Todd, 1951年5月16日 – ) は、フランス歴史人口学者・家族人類学者である[1]。人口統計による定量化家族構造に基づく斬新な分析で知られる。フランス国立人口学研究所 (INED)(フランス語版) に所属していたが、2017年5月17日付けで定年退職した[2]2002年の『帝国以後』は世界的なベストセラーとなった。経済よりも人口動態を軸に歴史を捉え、ソ連崩壊イギリスのEU離脱、アメリカでのトランプ政権誕生を予言した。

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今回の新書では教育についても述べられており、興味があったので読んでみました。ソ連崩壊やイギリスのEU離脱、アメリカのトランプ政権誕生を予言した方だけあって非常に読み応えのある本でした。

重要なことが多かったので忘れないためにも書いておきます。

過度な競争に量限界について

この本ではアメリカやフランス、ドイツ、イギリスや日本の政治的状況についてエマニュエル・トッドの見解が述べられているのですが、どの国にも共通するのは「過度な競争による限界」なのではないかと思いました。過度な競争による限界に近づいており、その症状がどの国でも見え始めているということです。

具体的な例で分かりやすいのは、アメリカです。アメリカは1930年からエリート層によって、自由貿易を押し付けてきまいしたが、それがアメリカ国内の格差を助長し保護貿易を主張するトランプの当選につながったとドットは主張しています。

また、深刻なのはトランプを支持しているのは自由貿易の中で競争に敗れた中間層だけでなく、高等教育内の競争に敗れた白人層もいるということです。、一方でクリントンを支持する層はエリート層。つまり、競争に勝った層であるということです。

この構図から、何が見えてくるでしょうか?あなたは分かりますか?

グローバルゼーションにおける貿易、教育の競争の中で勝者と敗者が決定され、国内が分断されていることがわかります。

こういった状況はフランスの黄色いベスト運動やドイツ、イギリスでも顕著です。イギリスの場合はブレグジットを行うことによって、保護主義に転換しています。このことから、世界では「過度な競争による限界」が発生しており、それがトランプの当選や黄色いベスト運動、ブレグジットという形で顕在化していることが分かります。

競争に勝った者(エリート)と競争に敗れた者(労働者)の対立が世界的に見られているのです。

エマニュエル・トッドのイメージする保護主義

「保護主義に走っていく世界はどんどん閉ざされていくのはマズいのでは?」という意見もありますが、トッドは「グローバリゼーションは終わるが、世界化は終わらない」と主張しています。

つまり、自由主義による貿易は終わるが、ヒト・モノの移動といった基本的なものはより世界が一体化していくということです。今後はインターネットによってさらに世界は一体化していくと。

一方で自国の労働者や大卒の若者を守っていくためには適度な保護主義に転換しなければならないと主張しています。保護主義というとトランプのような過激な思想をイメージしますが、ドットのイメージする保護主義とは自国の最低限の利益は維持しつつ、貿易も行なっていくということです。

確かに分断された世界ではそのやり方が一番現実的ですし、現にアメリカやイギリスがそういった動きになっています。

教育は保護主義によってマシになる?

ドットはこの新書で「現代における教育はもはや社会階級を再生産し、格差を拡大させるものになってしまった。」と主張しています。

確かに今のアメリカの分断された様子を見るとそうなのかなと思いますが、それは結局冒頭でも紹介した「過度な競争」によるところが大きく、結局、グローバリゼーションという大きな競争構造が有る限り、教育もそうならざる負えないのではないかと思いました。

逆にアメリカがグローバリゼーションから保護主義に転じつつある今、教育はどうなっていくのでしょうか?少なくとも、高等教育を受けたアメリカ人の救われる確率は上がります。その時に教育は社会の中でどのような機能を発揮するのでしょうか?

ドットは「トランプが当選した事実よりも、トランプを支持している層に注目するべきだ」と主張しています。確かにこうして支持している層を見ると、世界の流れを汲み取ることができます。明らかに過度な競争に疲弊している人々がいる。

世界は過度な競争に疲弊し、「いかに自国を守るか」というスタンスに変化しつつあります。その時に日本教育がなすべきことな何か?皆さんも是非考えてみて下さい。

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